こんにちは、棚田です。
前回に続き、今回もケースの紹介です。
少し前の話なので、思い出しながら書いています。
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受講生のBさん(40代男性)は、毎回のように講座の時間に遅れてきます。
講座の始業時間に遅れてくることは、大した問題ではありません。
しかし、毎回のように講座に遅れてくるBさんの様子を見ていて、「おやっ?」と思うことがありました。
それは、「今日も遅れちゃって済みません」と言葉では謝りつつも、ニコニコしながら周囲に笑顔で愛想を振り巻いて、ゆったりとして落ち着いた足取りで教室のど真ん中を堂々と横切って席に着くのです。
私が気になったのは、Bさんの言葉と態度との間に見られる「不一致感(incongruency)」です。
休憩時間にBさんに声を掛けて、Bさんの言葉と態度の間に見られる「不一致感」について話をしたところ、Bさん自身も「自分でも気になっている」とのことでした。
そこで、Bさんの遅刻の背後にあるものをセッションで探求することになりました。
まず初めに、「今日も遅れて済みません」と言いながら笑顔で堂々と教室に入ってくるときの場面を再体験してもらいました。
(棚田)「Bさん、今どんな感じがしてるの?」
(Bさん)「嬉しいような、勝ち誇ったような気がします」
(棚田)「『私(棚田)に勝った』という感じ?」
(Bさん)「いいえ。『誰に勝った』とかいうよりも、自分が大きくなったような・・・、偉くなったような感じです」
(棚田)「だから、笑顔で堂々と胸を張って教室に入ってくるんですね」
(Bさん)「はい、そうです」
通常、「約束を守れない」「予定の時間に遅れる」といった悩みを抱えている場合は、弟や妹として生まれて末っ子として育った人に多い《成長してはいけない》というリミッティング・ビリーフを疑うのですが、Bさんの場合はそれとは違うようです。
(棚田)「ちょっと試してみたいことがあるんだけどいい?」
(Bさん)「はい」
(棚田)「もう一度、遅刻して教室に入ってくる場面を再体験して、Bさんが勝ち誇ったような気持ちになったピークの瞬間に、『俺はお前に勝った!』って言ってみてくれる?」
(Bさん)「はい」
(Bさん)「俺はお前に勝った!」
その瞬間、Bさんの目から大粒の涙がこぼれ落ちました。
(棚田)「Bさんは誰に勝ったの?」
(Bさん)「父親です」
(棚田)「じゃあ、お父さんの目を見て、『俺はお前の命令になんか従わないぞっ。俺は自由だーっ!』って伝えてみてくれる?」
Bさんは父親へのセリフを伝えた後、しばらくの間、小さい子どものように泣き続けました。
子どもの頃、Bさんは父親からひどい暴力を受けて育ったそうです。
父親の言うことはいつも絶対で、少しでも父親に口ごたえしようものなら父親がキレて、子どものBさんに暴力を振るっていたそうです。
それは、子どものBさんにとって屈辱的な体験で、大人になった現在も、あらゆる規則やルールを守ることを屈辱的に体験していることに気が付きました。
だから、Bさんにとって、授業に遅刻することは外から押し付けられた規則やルールに自分が屈しないことの表現であり、自分という価値ある人間を自分で守り、大切にするための重要な手段の一つだったのです。
詳細は省略しますが、その後のセラピーによって、Bさんは「私は自由であり、他人も自由である」「規則やルールを守ることは、決して相手に対する服従を意味するものではなく、むしろ、相互の敬意を表すものである」という新しいビリーフへと変化していきました。
ちなみに、Bさんと同様の悩みは、いわゆる受動攻撃型のパーソナリティ(障害)の人に多く見られるものです。
棚田克彦
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